2.態動詞による自律動作/律他動作の表現

 態動詞生成の接続手順を方程式のように表すと、
・【動詞語幹+[挿入音素]】+態接辞、という3項方程式になります。
 最初に【動詞語幹と挿入音素】を一括りにすると、態接辞が単一形態で明示でき
 ます。
例:子音語幹の場合:挿入音素[]なしでOK。
 ・休む−休m[]eru−休m[]aru−休m[]areru
 ・休m・as[]u−休m・as[]eru−休m・as[]aru−休m・as[]areru
 ・休m・ase[r]u−休m・ase[r]eru−休m・ase[r]aru−休m・ase[r]areru
例:母音語幹の場合:挿入音素[r]:能動系、または[s]:強制系、使役系のとき。
 ・食べる−食べ[r]eru−食べ[r]aru−食べ[r]areru
 ・食べ[r→s]as[]u−食べ・s・as[]eru−食べ・s・as[]aru−食べ・s・as[]areru
 ・食べ・s・ase[r]u−食べ・s・ase[r]eru−食べ・s・ase[r]aru→
  −食べ・s・ase[r]areru
〇挿入音素[r]は「食べ・る」の語尾子音「r」に由来するが、根源的には[r:自律動
 作、自力動作]を意味する。
〇挿入音素[s]は「食べ・さす、・させる」の「S[]asu、S[]aseru」の[S]:する動詞
 の単音語幹に由来する。また同時に、古来より「なる:naru/なす:nasu」の自
 他交替のように、「r→s」交替で自律動作[r]から律他動作:他を律する動作[s]
 へ転換する法則があると推測できる。
〇この「r→s」交替法則は、基本の態接辞そのものにも適用でき、
 ・直接的に、結果態接辞:a(r)u→強制態接辞:a(s)uの転換にも関与するから、
 ・母音語幹の結果態:食べ[r]a(r)u→強制態:食べ[s]a(s)u、
 ・母音語幹の受動態:食べ[r]a(r)eru→使役態:食べ[s]a(s)eru、
  のような動作の自律/律他の転換が表現できる。
 ・子音語幹の場合も休m[]a(r)u→休m[]a(s)u、
  休m[]a(r)eru→休m[]a(s)eru、のように動作の自律/律他の転換表現とな
  る。
このように、
 ・食べらる←・→食べさす、食べられる←・→食べさせる、が「r←・→s」交替で出
 現し、鏡像関係にあるような動詞空間ができる。
〇従来の態文法では「r/s」交替を深く解釈することがなく、自律動作/律他動作
 の区別に鈍感な対応しかしていなかった。「態の双対環」文法としては「r→s」交
 替の位置付けを自律/律他の交替になぞらえる考え方に到達した。
 この段階でも態文法の新境地に一歩踏み込んだ解釈ができるようになったと感
 じる。