2011/12/17(土)、12/16(金)
 五年先のビジネスを読み解く

*未来の予測は誰にでもできる:
 ・先見性はひらめきや直感で生まれない/論理的思考によって生まれる。
 ・「ボーダレス経済」、「地域国家論」も当時は誰も想像していなかった/世の中の動きを観察し、「こうではないか」と仮説を立てて検証していくと/裏付けるさまざまな証拠が見つかり「間違いない」ということで/導き出された。
 ・「道州制」を言い始めたのは1980年頃だが、25年近くたった今頃になって自民党や民主党がマニフェスト(政権公約)として掲げるようになった/とは言え両党とも道州制の本当の意味をわかっていないようだが。

*「今が買い得」にだまされた人、だまされなかった人:
 ・1991年から1996年頃の間に家やマンションを買ってしまった人は、今頃さぞ悔しい思いをしているはずだ/「誰も予測できなかったことだから仕方ない」だろうか/私は少なくとも92年には「東京の地価は五倍は過大評価されている。いずれ五分の一になる」と主張し、『文藝春秋』に寄稿していた/先見性というよりも、政府や業界、マスコミの言うことを鵜呑みにせず誰にでも手に入るデータを分析するだけで簡単に出せた答えなのだ。
*潰れる銀行は潰すべし:「地価が五分の一になる」と同時に「これでは普通の銀行はもたないから100行は潰れる。潰れる銀行は潰すべきだ」と言った/日本の個人金融資産は1000兆円あったから、当時の不良債権200兆円はその20%でしかない/だから日本は必ずこの苦境を乗り越えられるので、潰れる銀行は潰し、潰れる企業は潰したほうがいいはず/しかし、銀行は公的資金の注入と、超低金利でほとんどが生き延びた。
 ・そのために国民の財産が食いつぶされ、景気低迷は長く続くことになり、いまだに不良債権が100兆円(しかも厄介なものばかり)も残っている/予測をあやまったのは「銀行が潰れると大変なことになる」と思っているからだ。

*練習問題:
*日本の銀行が潰れたら、どんな大変なことが起るのか、また、誰が困るのかを考えてください。
 ・別に大変なことは起らないし、誰も困らない/政府のフェイントに引っかかり集団催眠にかけられているだけ。
 ・銀行は経済の血管だというが、この10年以上にわたってその機能を果しておらず、それでも日本経済が破綻していない/銀行が潰れても何の影響もないということ/日本の銀行は世界から資金調達をしていないから、日本発の信用不安は起らない。
*政府による銀行救済は全く無意味:
 ・事実、80年代の米国や90年代初頭のスウェーデンなどで、不良債権が処理できずに銀行がいくつも潰れた/それで困った国というのは存在しない/当時のブッシュ大統領は公的資金1500億ドルを投入して「預金者を保護」しつつ700以上の貯蓄貸付組合を清算した/注意すべき点は、公的資金を「預金者の保護」に使ったこと/日本のように銀行の延命のために使われたのではない。(国内都市銀行なら顧客は地域住民が多いから「預金者保護の名目が立てやすい」かも)
 ・なぜか。銀行業務が必要なかぎり、必ず誰かが代りをする/預金が保護されていれば、そのお金は潰れた銀行から新たな健全な銀行に移る/新しい銀行がそのお金を企業や個人に貸し出すので融資が減ることもない/政府が特定の銀行を救う必要などまったくない。
 ・唯一、潰れた銀行の行員が困るといえば困る/しかし機能していない銀行の行員としては、早めに退職してふさわしい仕事を見つけるほうが本人のためだろう。

*五年後の世界を見通すための思考回路:
 ・「機能分解」をしてから考える。
 ・例:練習問題:携帯電話が五年後にどうなっているかを考えてください。
 ・先見性の思考回路を鍛えるため考え方のポイント:まずそれが持つ機能を分解することだ
 /そしてそれぞれの機能が将来的にどうなっていくかを見通すのだ。
 ・パソコンの入出力機器としての携帯電話/すでにカメラ機能がついてパソコンの画像入力機器になっている/音楽なども携帯電話にダウンロードして聞くことができる/電子財布の役割も組み入れられている/携帯電話がIDとして使われセキュリティに役立てる/携帯電話ならその場で音声認識の通話やりとり、顔認証などで本人確認ができるから、盗まれても安全なシステムができるはず/音声とGPSの組み合せで「行先案内」にも使える/すべては携帯電話に統合される:ある企業がすべての機能を統合して標準化すれば実現する/バラバラの出来事を一つの物語りにまとめる/デジタルデバイドを心配して開発スピードを遅らせるな:新旧並行する時期を考えれば、新しいことは進めればよい。

 ・例:練習問題:今から五年以内に新たに家庭内に普及しているIT機器はどんなものだと思いますか?
 ・私は五年後に確実に普及していると考えるのはホームサーバーという概念のストレージ機器だ/家庭内のすべての記録、写真、銀行口座、年金保険、映像、音楽、などの情報が蓄積されていく。
 ・20年間変らないメーカーの思考パターン:
 ・実験室や象牙の塔のなかで作った情報家電・情報住宅などは一般受けしたことがない。
 ・人間が欲しいのは「手取り足取り世話をやいてもらう」ことではなく、「代りに任せられる」ことである。

*「事業成功のパターン」の四条件:
 ・①事業領域の定義が明確にされている/②現状分析から将来方向を推察し、因果関係について簡潔な論旨の仮説が立てられている/③自分のとるべき方向についていくつか可能な選択肢があっても、どれか一つに集中する/④基本の仮説を忘れずに、状況がすべて変化した場合を除いて原則から外れない。
 ・思考パターンを鍛える段階では、①、②の要件を満たすように思考するべきだ。

*練習問題(宿題):あなた自身が「五年後はどうなっているか」を、一枚の紙に書き出してみてください。

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