あとがき
日本語の態文法を再生させるということを最初から望んでいたわけではないが、
学校文法の間違いに気づきはじめてからは、なんとか本当の態文法を再思考したい
と思い始めた。
まったく文法研究の手法を知らない状態から、思考実験に自他交替接辞の仕組を使
って「態の双対環」を思いついたこと、これが幸いでした。
「態の双対環」は態動詞を規則的に生成して抜け落ちなく一望できる利点があり、
「態の意味合い」も自分の語感で対比しながら理解を深められた。
〇受動態が単に受身表現だけでなく、結果可能、尊敬、自発を描写する深層構造を
持つと納得できるようになったころ、新しい疑問に突き当った。
★国語辞典で見出し語:「受動態」を引くと、多くの辞典が「受身」を説明するだけ
で、追加的に説明する場合でも「自動詞にも受動がある」、と載せるだけ。
能動・能相/受動・所相で態の対比を載せるのみ。
<受動態は受身態ではないはずだ。西欧語の受身態と同等だと説明したいのか?
日本語の結果態、受動態は「動作[母音語幹なら:r]ある態」、「動作[母音語幹なら
:r]あれる態」なのだとの思いが強くなった。 受動態の形態で、受身も実績可能も
自発も尊敬も表す理由を説明するのが辞典の役目だろう? 三上文法の能動詞/
所動詞の所動は受身だけではないはず、、、>
<同様に国語辞典は、日本語の強制態、使役態が「動作[母音語幹なら:s]あす態」、
「動作[母音語幹なら:s]あせる態」なのだとまったく分かっていないことになる>
<思考:態接辞:(r)areru、(s)aseruの(r)、(s)は語幹側に付けよう!>
と思いついた。
〇態接続を「ひらがな解析」でなく、「ローマ字解析」で行えば、正確に表記できる。
その効果は動詞語幹の子音/母音の語幹識別を明確にしただけでしょうか。
〇効果はまた、態接辞の形態を正確に割り出したのです。これを見逃している。
共通の態接辞の形態が、「eru、aru、asu、areru、aseru」なのです。
〇態動詞の方程式=「【動詞語幹+母音語幹に[r/s]付加】+態接辞」を採用すれば、
統一態接辞で表現できるし、言い間違いをなくせると考えた。
・不思議なことに誰も気づかなかった独自解釈【語幹に挿入音素を付加】といえる。
〇さらに一般化した3項方程式:「【動詞語幹+挿入音素[x]】+機能接辞」にすれば
、次段の動詞活用や助動詞接続の方程式にも適用できるのです。
<思考:「【動詞語幹+挿入音素[r/s]】の[r/s]とは>
〇態生成での挿入音素:子音語幹+挿入音素[]なし、(態接辞はすべて母音始まり)
・母音語幹+挿入音素[r]:終止形原形語尾「〜る:r」。 r:自律動作を示す。
例:見る:mi[r]eru、mi[r]areru、食べる:tabe[r]eru、tabe[r]areru 。
・母音語幹+挿入音素[s]:強制・使役の「さす・させる」の語頭「s」を使う。
s:律他動作を示す。(他を律する動作、他にさせる動作)
例:見さす:mi[s]asu、mi[s]aseru、食べさす:tabe[s]asu、tabe[s]aseru 。
〇挿入音素[r]→[s]の交替は、さらに根源的な交替:接辞内での交替も推測でき、
結果態:a(r)u←・→強制態:a(s)u、受動態:a(r)eru←・→使役態:a(s)eru、
という鏡像関係があるようだ。(自律動作/律他動作の鏡像関係)
例:見らる:mi[r←・→s]a(r←・→s)u:見さす、
見られる:mi[r←・→s]a(r←・→s)eru:見させる。
歩かる:aruk[]a(r←・→s)u:歩かす、
歩かれる:aruk[]a(r←・→s)eru:歩かせる
〇この鏡像関係については「態の双対環」の統合環ができるのかどうか今後に向け
て思考してみたい。
<思考:時枝誠記の入れ子型、風呂敷型構文:「日本語構文は前へ前へと括られる」>
〇これも今後の思考課題であるが、「(動詞語幹+[挿入音素])の括り方」は前へ前へ
と入れ子にしていく時枝誠記の「国語学原論」に適合する認識方法かもしれない。
「日本語は後へ後へとつながる」と思い込んでいるが、「前へ前へとつながる」と考
えるほうが現実的で正しいはずだ。(今になって実感する)
〇少し思考してみよう。
・文=「(補語+助詞)*n個+述語」、が基本構造だとすると、
連体修飾文で特定の補語を補強すると「((文・補語)+助詞)+文」、の構造になる。
・前へ前へつながる構造だから、文が「その場の意味の流れ」を巻き込みながらつな
がっていく。
〇「態文法」の範囲を超えて広がる領域ですね。今後の課題にしてみよう。
今は「態の双対環」を中心に態生成の方程式をまとめ上げることができたので一区
切りにしたい。