第一章
1.日本語の動詞の構造
 動詞は発話のなかで活用されて構造が変化していきます。
いわゆる膠着語として動詞に接尾辞や助動詞が後続して活用されます。

  最初に日本語の動詞の区分方法について簡単にふれておきます。
【自動詞か、他動詞かの識別法から動詞を区分】
①無対自動詞:飛ぶ、歩く、走る、泣く、死ぬ、、
 (通常、対応する他動詞動作がない)
②有対自動詞/他動詞:立つ/立てる、移る/移す、動く/動かす、伸びる/伸す、
③有対他動詞/自動詞:掴む/掴まる、取る/取れる、倒す/倒れる、落す/落ちる、
④無対他動詞:飲む、食べる、売る、買う、調べる、、
 (通常、自動詞動作がない)
⑤自他両用動詞:ひらく、とじる、
 に分類される。

有対自他動詞は、一つの根源動詞から接尾辞を付加して自動詞と他動詞を生み出す
方法:「自他交替」機能で効率的に動詞の数を増やしたのです。派生した動詞の「対」
は有対自動詞・有対他動詞と呼ばれ、それぞれ個別の動詞単語として使われます。
自他交替を作り出す機能接辞の性能は、基本的に「動詞の態変化の表出」をつかさど
る力を持っていますから、汎用的に態機能の生成やアスペクト的な変化機能を表す
ものが含まれています。
つまり、自他交替接辞からいくつかの汎用的な接辞を態接辞として再利用している
のだと「態文法「態の双対環」」では見なしたのです。

【有対自他動詞の生成をローマ字つづりで音素解析する】
動詞に機能接辞が後続して新しい単語となる場合の構造変化は、要素の単純横並び
の複合ではなく、音韻的な接合変換を伴います。
合理的に「音韻的な接合変化」を調べるためには、「ローマ字つづりによる音素解析
」が必要で、従来の「ひらがな解析」では把握することができません。
たとえば、(ちょっと寄り道ですが)
・自動詞:「休まる」は、原動詞「休む」に機能接辞:「ある」が接合して誕生した動詞
 です。
・同様に自動詞:「掴まる」は、他動詞「つかむ」に機能接辞:「ある」が接合した動詞
 です。
従来の学校文法の「ひらがな解釈」では(接辞付きの動詞として分析したら)
・休むの未然形:休ま−、に「−る」が付く、
・つかむの未然形:つかま−に「−る」が付く、という解釈しかできません。
一方、ローマ字つづりで音素解析する立場では、
・休m・aru:[yasum]+aru、のように、語幹と「ある」を明確に分解表記できます。
・つかm・aru:[tukam]+aru、のように、語幹と「ある」を分解表記できます。
当然ながら「ある」は潜在的に、「在る、有る、ある、」の意味を持っています。
★休む、つかむの動作結果が「ある」状態を「休まる」、「つかまる」で表します。
 結果の状態動詞ではありますが、休んで安息が「ある」状態への周到な動作をする
 ことの意味も含んでいます。
・何かに「つかまる」も、つかんで保持する状態を「あらす、あらせる、あるように
 する」動作が含まれているはずです。
機能接辞「ある」をきちんと「ある」と認識することで正しい理解ができますし、動詞
単語のなかに機能が埋め込まれていると教えられます。

以下、しばらくは「ローマ字つづり」が混在しますので、分析に立会うつもりでお読
みください。
本題にもどって、まず、有対自他動詞での自他交替機能接辞を分析します。
基本の態接辞が早々に出てきます。
つぎに無対自動詞、無対他動詞の自他交替:これは使役・受動交替というべき機能接
辞に相当しますが、それを分析します。使役、受動の機能接辞は、まさに態の接辞で
す。
有対自他動詞の機能接辞が基本の由来ですから、順番に確認していきましょう。


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