1.2【無対自動詞、無対他動詞の使役交替の方法】=態を交替させる
無対自動詞に対する自他交替とは、相手に能動自律の行動をさせる動詞→強制、使
役動詞の生成です。
また、無対他動詞に対する自他交替とは、相手の動作を受動的に受ける状態を表す
動詞の生成です。
前節に示した動詞例で言えば、
①無対自動詞:飛ぶ、歩く、走る、泣く、死ぬ、
④無対他動詞:飲む、食べる、売る、買う、調べる、
などを(自他交替)使役交替(:態交替)させる方法を見つけ出しましょう。
同じく前節の【例1】で指摘したように、
例1では自他交替接辞が母音始まりの「eru、aru、asu」を取り上げました。
この3つの接辞は重要な機能があり、後述の「態の接辞」として再利用します。
と前触れしました。
【「態の双対環」:対になる態の接辞が2組あり、直交軸を成す】
「態の接辞」の詳細は「態の双対環」の項で説明しますが、復習と予習を兼ねてチラ
見せします。
前節の有対動詞【例1】前半にある「休む」動詞を見本にして考察します。
〇休[yasum]aru:自動詞/[yasum]eru:他動詞、を示しました。
この2つの接辞が自他交替を成し遂げられると言うことは、動詞の態交替を為し
ているはずだと考えた。(対向関係にある接辞の対:休まる−休める)
〇また、休[yasum]u:能動/[yasum]areru:受動
これが2つ目の対向関係にある接辞対です。(休む−休まれる)
〇「態の双対環」は、2つの対向接辞を水平・垂直に組み合せて環状にした図柄を想
像したものです。簡略一行表記では、休む/休める/休まる/休まれる(図柄配置
は上・右・左・下)とします。
〇ローマ字つづりで一行表記すると、
強制態では
・休ます[yasum]asu/[yasum]as・eru/[yasum]as・aru/[yasum]as・areru
、となります。
・熟達すれば、休ます[yasum・as]u/[yasum・as]eru/[yasum・as]aru
/[yasum・as]areru、と発話したりができるようになるでしょう。
使役態では、
・休ませる([yasum・as・e]r)u/([yasum・as・e]r)eru/([yasum・as・e]r)aru
/([yasum・as・e]r)areru、という発話ができると「双対環」熟達レベルですね。
本題にもどります。
【例4:無対自動詞の使役交替:態交替】
・飛[tob]u/[tob]eru/[tob]aru/[tob]areru、
・飛ばす[tob]asu/[tob・as]eru/[tob・as]aru/[tob・as]areru、
・飛ばせる([tob・as・e]r)u/([tob・as・e]r)eru/([tob・as・e]r)aru
/([tob・as・e]r)areru、
(能動系「双対環」、強制系「双対環」、使役系「双対環」を表示した)
・走[hasir]u/[hasir]eru/[hasir]aru/[hasir]areru、
・走らす[hasir]asu/[hasir・as]eru/[hasir・as]aru/[hasir・as]areru、
・走らせる([hasir・as・e]r)u/([hasir・as・e]r)eru/([hasir・as・e]r)aru
/([hasir・as・e]r)areru、
(能動系「双対環」、強制系「双対環」、使役系「双対環」を表示した)
【例5:無対他動詞の使役交替:態交替】
・飲[nom]u/[nom]eru/[nom]aru/[nom]areru、
・飲ます[nom]asu/[nom・as]eru/[nom・as]aru/[nom・as]areru、
・飲ませる[nom]as・eru/([nom・as・e]r)eru/([nom・as・e]r)aru
/([nom・as・e]r)areru、
(能動系「双対環」、強制系「双対環」、使役系「双対環」を表示した)
・食([tabe]r)u/([tabe]r)eru/([tabe]r)aru/([tabe]r)areru、
・食([tabe]r)u/([tabe]r)eru/([tabe]r)aru/([tabe]r)areru、
・食べさす([tabe]s)asu/[([tabe]s)as]eru/[([tabe]s)as]aru
/[([tabe]s)as]areru、
・食べさせる[([tabe]s)as]eru/([([tabe]s)as・e]r)eru
/([([tabe]s)as・e]r)aru/([([tabe]s)as・e]r)areru、
(能動系「双対環」、強制系「双対環」、使役系「双対環」を表示した)
★母音語幹動詞の語尾に「r」付加した形態:([tabe]r):(母音語幹+「r」挿入音素)
で態接辞につなぐ。
★強制系、使役系では「r」を「s」に交替させた形態:([tabe]s):(母音語幹+「s」
挿入音素)で態接辞につなぐ。
【分かったこと:無対自・他動詞の使役交替法】
①無対の自動詞、他動詞の動作に対する周囲への影響は、受動態や強制、使役態
などで表現できる。(予習中ですが)自他交替の接辞のうち使役交替、態交替にも
再利用する接辞がある。
(自他交替接辞:母音始まりの「eru、aru、asu」の3つ、これを合成した「areru」受動
態接辞、「aseru」使役態接辞の合計5つが態の接辞です)
②(予習中ですが)「態の接辞」5つを使った相似的な3種の「双対環」文字列表記を
初めてお見せしました。面倒くさい表記形式で読みにくいかもしれません。
でも、実際の会話の中では皆さんが頭の中で操作している態の構造なのです。
とは言え、少し簡略化した表記を次節に示します。
③「食べれる」と「ら抜き言葉」を断りもなく混入させています。
自然な言語用法なので【態文法・考」では正当に採用しています。
・可能態はeru/受動態はar・eruですから、「ar抜き言葉」なら正確な現象呼称で
す。世間の「ら抜き言葉」呼称そのものが文法解釈を踏み外しています。
・可能態を母音語幹の動詞にも認めるべきで、詳細説明は後述する予定です。
***