続・福島原発事故の本質:を読んで

2012/03/04(日)
 3月5日付の日経エレクトロニクス寄稿記事「続・福島原発事故の本質」〜メルトダウンに至った本当の理由〜
寄稿者:山口栄一(同志社大学大学院教授)を読みました。

1)これは昨年5月の同氏の寄稿記事:
の続編です。 事故の継続調査で補追されたものですが、初稿の分析内容が的確であり論旨は一貫して変っていません。
今回の記事で補強されたのは、「東電・経営首脳陣の技術経営の判断ミス」を明らかにすること、人智の深い教訓にすべきこと、でしょう。

2)東電・経営首脳陣の大失態行為:
 東電経営首脳陣は半身不随の福島原発の惨状に囚われて、冷静な決断を下せず、かえって日本中の全原発を完全廃炉へ突落すことへつながる大失態をおかしてしまった。
①福島第一原発1号機:米国GE社主導で建設された初期型。
 全電源喪失に対応できる緊急自己冷却は8時間しか持たない。 海水注入が間に合わなかったのは不可抗力だったかもしれない。
②だが、2号機、3号機:日本技術陣も主体的に改良設計した構造。
 全電源喪失に対応する「最後の砦」が2号機では約63時間、3号機では約32時間のあいだ働いた。
③1号機への注水開始後も首脳陣は廃炉にするのを嫌い、2号機、3号機への「海水注入」を決断せず、むしろ拒否を続ける姿勢をとった。
④あぁ、「最後の砦」が動いているうちに、「海水注入」を決断していたら、2号機、3号機のメルトダウンは未然に防げたはずだろう。
○「米国主導の初期型は安全力が弱かったが、日本改良型は安全性が強化されている」と幾分とも日本企業として面目が立つ道もあったはずであろうに。

3)責任のとりかた:
 これだけの大失態を起していながら、「すべて大震災・大津波のせいで、想定外のこと」で済まされない。
○だが、東電首脳陣の誰かが「頭を丸めて反省の姿勢」を見せただろうか? その気概、矜持を首脳陣が持たずにいることが残念でならない。
○先日の東京マラソンの後、川内優樹さんが「丸刈り頭」を披瀝した。
 市民ランナーを五輪代表へと応援してくれた方々への「果せぬ思いの責任」を示したもので、つよく共感した。
○わたしにも経験があり、「無理を通した後悔と、これからの大事に対峙する覚悟」が同時に重なってきた時期があった。
どちらも「組織のしがらみ」だと言って逃げては良心が済まない。 自己責任で表現しなければならない思いだった。
わたしが選んだ方法は「散髪を絶ち長髪で後悔を示し、大事に失敗したら丸刈り頭になる」こと。
幸い、半年間の大事を無事に終え、長髪は肩甲骨にかかるポニーテールになるだけで済んだが、リタイアまで続いた。
それでも、はた目では「変り者」と映った程度だったろう。

4)ストレステスト:
 原発ストレステストの項目に原発事業者首脳陣に対する「義務」を明記すべきだ。
○過酷事故に際して「最後の砦」緊急自己冷却しか動かない状況で「廃炉決断」を迅速に下すこと。
○「丸坊主」となって住民、国民に詫びること。 全賠償に責任をもつこと。
○これなしに各地の原発の再稼働は認めるべきではないだろう。